最近、お客さんからよく言われます。
「魚、高くなったね」
正直、魚屋の私も同じことを思っています。
でもこれは、単純に「魚屋が値上げしている」という話ではありません。
毎朝市場に通っていると、魚そのものを取り巻く環境が、昔とはかなり変わってきたなと感じます。
円安、世界的な日本食ブーム、魚の減少。
いろんなことが重なって、昔のような感覚で魚を売ることが難しくなってきました。
今日は、魚屋として最近感じていることを書いてみようと思います。
昔は普通に使えたホタテが、今は気軽に使えない
昔、ホタテはもっと使いやすい存在でした。
刺身の盛り合わせにも普通に入れられたし、
「今日は少し豪華にしようかな」
という時にも使えました。
でも今は、魚屋としても
「今日は使うか、やめておくか」
と悩むことが増えました。
理由の一つは、海外需要です。
実は昔、日本人はホタテにかなり厳しかった。
粒の大きさが揃っていないとダメ。
生きていて、身がプルンプルンじゃないとダメ。
少し固まっていたり、見た目が崩れていると値段がつきにくい。
要するに、日本はかなり“うるさいお客さん”だったんです。
でも海外は少し感覚が違います。
中国やアメリカでは、日本ほど細かい規格を求めないことが多い。
サイズが多少違っていてもいい。
少しくらい崩れていてもいい。
極端に言えば、
「ホタテなら使う」
という感覚に近いのかもしれません。
しかも、日本より高く買ってくれる。
そうすると当然、日本に回る量は減ります。
昔なら普通に盛り合わせへ入れられたホタテが、今では「今日は使えるかな」と悩む存在になってきました。
コロナの時、一時的にホタテが安くなった時期がありました。
輸出が落ちた影響もあって、
「あ、少し使いやすくなったな」
と思ったのを覚えています。
でもその後、海外需要が戻り、今ではまた昔の感覚では使えないくらい高くなっています。
円安は、魚屋にもかなり大きい
実は、日本の魚屋は国産だけで成り立っているわけではありません。
シャケ。
銀ダラ。
カラスガレイ。
エビ。
普段、家庭で普通に食べている魚も、海外から来ているものが本当に多いんです。
だから円安になると全部上がる。
特に最近は、それを強く感じます。
例えば保育園などで使う魚も、養殖シャケや冷凍魚が多い。
そうすると、円安の影響をまともに受けます。
昔は、
「今日はこれが高いから、別の魚で調整しよう」
というやり方ができました。
盛り合わせも、
「ホタテや甘エビを少し入れて満足感を出そう」
という組み立てができた。
でも最近は、その“調整役”だった魚まで高くなってしまった。
だから魚屋としても本当に難しい。
しかも魚屋って、魚の原価だけで商売しているわけじゃありません。
冷蔵ケースを動かす電気代。
包装資材。
氷。
水道代。
売れ残り。
今日売れなければ価値が落ちる。
だから、見えないコストもかなり大きい商売なんです。
海そのものが変わってきたなと思う
そして最近、一番感じるのは海そのものの変化です。
サンマ。
シャケ。
サバ。
そしてイカ。
毎日市場に立っていると、
「海が変わってきたな」
そう思うことが本当に増えました。
特にイカ。
昔はスルメイカって、大衆魚でしたよね。
魚屋としても使いやすかったし、お客さんも当たり前のように買っていた。
でも最近は、本当に少ない。
「最近イカ高いね」
と言われますが、そもそも市場に出てくる量が減っている。
だから値段も上がる。
白イカ(シロイカ)も、以前よりかなり高くなりました。
「これはおいしいから使いたい!」
と思っても、値段を見て悩むことが増えました。
サンマは細くなった。
シャケも不漁。
サバも昔ほど脂が乗らないと感じることがあります。
海水温なのか。
海流なのか。
温暖化なのか。
原因は簡単にはわかりません。
でも市場に立っている感覚として、
「海、変わったな」
これは本当に思います。
昔は日本くらいしか食べなかった魚も、今は世界中が食べる時代になりました。
寿司や日本食が世界に広がったこともある。
そして魚そのものも減っている。
だから今は、ある意味、
世界中で魚の奪い合い
みたいな時代になっているのかもしれません。
それでも、良い魚を探したい
魚屋の仕事は、ただ魚を並べることではありません。
高いから終わり。
少ないから終わり。
ではなく、
「今日うまい魚は何だろう」
を探すことだと思っています。
昔より難しい時代になった。
でも、そんな中でも「今日はこれがいい」と思える魚を見つけて、お客さんに届けたい。
毎朝市場を歩きながら、そんなことを考えています。

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