魚屋をやめたいと思うことはあります。
朝は早い。
仕入れは難しい。
魚は高い。
売れ残れば困る。
体も、若い頃と同じようには動きません。
いつまでできるのかな。
そう思うことがあります。
でも、魚屋をやめた後のことを考えると、
ひとつ困ることがあります。
うまい魚は、どこで買えばいいんだろう。
私は、無類の魚好きというわけではありません。
毎日でも魚を食べたい、
というほどでもない。
でも、時々食べたくなるんですよね。
おいしい魚が。
その魚を、
自分で選べなくなる。
それが嫌なんです。
豚肉や鶏肉なら、
スーパーで買っても十分おいしいものがあります。
牛肉も、少し良い店に行けば、
食べたい分だけ買えます。
でも、魚は少し違います。
高いものを買えば、
必ずおいしいわけではありません。
天然だから、
間違いないとも限らない。
見た目が良くても、
食べてみると少し違うことがあります。
おいしい魚に当たる確率は、
地域や買う場所によっても変わります。
実際、私もスーパーで良い魚を選べと言われたら、
あまり自信はありません。
市場では、
見た目だけで決めているわけではないからです。
まず魚を見る。
色つや。
魚体の形。
そういうところを見ます。
でも、最後はやっぱり手に取って、
触ってみないとわからない。
身の張り。
持った時のパツンとした感じ。
そこで初めて、
この魚は良さそうだなとわかるんです。
でも、パックに入っていると、
その最後の確認ができません。
その状態だと、
私でも見極めるのが難しいです。
それを普通のお客さんが、
見た目だけで判断するのは、
もっと難しいと思います。
魚屋をやっている今なら、
市場で自分の目で見て、手に取って選べます。
値段と魚の状態を見ながら、
買うか、やめるかを自分で決められる。
でも、魚屋をやめたら、
魚は普通に店で買うことになります。
今まで仕入れ値を知っていた魚を、
売値で買う。
たぶん、なかなか買えないと思います。
高いな。
市場なら、もう少し安かったな。
そんなことを考えているうちに、
結局、買わなくなる気がします。
魚屋を続けたいというより、
魚屋をやめたあとに、
うまい魚が食べられなくなるのが嫌なのかもしれません。
仕事は大変だから、
いつかはやめたい。
でも、うまい魚は食べたい。
ずいぶん勝手な話です。
魚屋をやめたあと、
私は魚を食べなくなるのか。
それとも、
高いなと思いながら買うのか。
今のところ、よくわかりません。
ただ、魚屋をやめても、
時々はうまい魚を食べたい。
その時になったら、
自分がいちばん面倒くさい客になるのかもしれません。

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