57歳。
独身。
子供なし。
こう書くと、「寂しい人生ですよね」
でも、自分ではそんなに悲観しているわけでもない。
仕事は魚屋。
朝早く市場に行って、魚を見て、切って、売る。
毎日それなりに忙しい。
友達もいる。
高校の同級生とは、もう10年ぐらい、年に数回飲み会を続けている。
だから、別に孤独ってわけでもない。
でも、同窓会って、楽しいのに、少し苦しい。
そんな話です。
学生の時の友達って、不思議な存在だ。
社会人になってからできた友達とは、少し違う。
損得がない。
肩書きも関係ない。
昔、同じ教室にいて、同じ空気を吸って、バカやってた仲間。
だから57歳になって会っても、
「うるせえな(笑)」
「お前変わんねえな」
そんな感じに戻れる。
これが、なんだか心地いい。
でも、最近少しだけ変わってきた。
会話の中心が、
「子供」
「孫」
「定年後」
になってきたのだ。
「息子が市場手伝ってくれてさ」
「今度、孫の運動会でさ」
「娘が結婚してね」
みんな嬉しそうに話す。
悪気なんか全然ない。
むしろ自然な会話だ。
それはよくわかっている。
でも、そういう話になった時、ふと思う。
俺、どういう顔していればいいんだろう。
「へえ、いいね!」
と素直に言えばいいのか。
笑って聞けばいいのか。
興味ありそうに聞けばいいのか。
正直、よくわからなくなる。
だって、自分には、
子供がいないからだ。
話を返せない。
もちろん、いじけたりはしない。
高校時代の友達には、暗黙のルールみたいなものがある。
からかわれても、絶対いじけない
「うるせえな、この野郎」
ぐらいで返す。
シュンとして、黙り込んで、空気を悪くするのは違う。
だから実際は、
「お前もジジイじゃねえかよ(笑)」
とか言いながら、普通に笑ってる。
楽しいのだ。
本当に。
でも、ふと我に返る瞬間がある。
帰り道とか。
風呂入ってる時とか。
「あいつ、息子いるんだよな」
「孫か…」
「俺、何やってたんだろう」
って。
少しだけ胸が痛くなる。
じゃあ、行かなきゃいいじゃん。
そう思う人もいるかもしれない。
でも、それも違う気がする。
断るのは簡単だ。
用事作ればいい。
でも、誘われなくなったら、それはそれで寂しい。
人とのつながりが切れていく気がする。
実際、自分は人と話すのが好きだ。
昔話も好き。
バカ話も好き。
自分と違う考えを聞くのも面白い。
だから、苦しい瞬間があるからといって、全部やめるのは違うと思う。
最近は少しだけ、開き直るようになった。
「そうですよ。57歳独身ですよ(笑)」
「子供いませんよ(笑)」
って。
ここまでくると、もう笑うしかない。
ウジウジしたって、何か変わるわけでもない。
慰められるのも、なんか違う。
ただ――
本音を言えば、少し羨ましい気持ちはある。
もし結婚してたら。
もし子供がいたら。
そんな人生もあったのかな、と思う時はある。
でも、人生って、思った通りにはいかない。
だったら、今ある人間関係は大事にしたい。
少し胸が痛んでも。
「うるせえな、この野郎」
って言いながら笑える友達がいるなら、それは財産なんじゃないかと思う。
57歳。
独身。
子供なし。
でも、まだ人生の途中。
そう思っている。

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